ロ憲法
「泰 佑 共 和 国 憲 法 」
上奏:泰永2年10月27日(火)
親署:泰永2年11月5日(木)
公布:泰永2年12月10日(木)
施行:泰永3年3月10日(木)
廃止:泰永5年9月1日(土)
親署:泰永2年11月5日(木)
公布:泰永2年12月10日(木)
施行:泰永3年3月10日(木)
廃止:泰永5年9月1日(土)
プライバシー保護の観点より、憲法中の人名は(芳名)と表記しました。
上諭
朕ハ今日ノ国政ヲ改メントス爾国民ノ赤誠ニ深ク感銘ヲ受ケ茲ニ新憲法ガ公布セラルヽ事誠嬉シク思ウ朕ハ泰佑帝國憲法第佰六拾七條ニ基ヅク皇撰帝會議ニ於ケル帝國憲法改正會ニテ政治部ヨリ上奏サル泰佑帝國憲法改正草案ヲ裁可シ茲ニ新憲法タル泰佑共和国憲法ヲ公布セシメル
朕ハ爾国民ガ此ノ憲法ヲ正シク運用シ国家ノ更ナル発展ニ寄与スル事ヲ要望ス
泰永二年 十二月十日 木曜日
御 名 御 璽 (泰佑帝國初代皇帝泰佑共和国初代国王)
御 名 (泰佑帝國初代皇后泰佑共和国初代女王)
政治部長兼内閣総理大臣 | (芳名) |
政治部女長兼大察官 | (芳名) |
政治部民事長兼上院議長 | (芳名) |
政治部民事女長兼政安院長 | (芳名) |
政治部軍事長兼陸軍大臣 | (芳名) |
政治部軍事女長兼海軍大臣 | (芳名) |
国務長官兼内閣官房長官 | (芳名) |
国務女長官兼大令官 | (芳名) |
神祇府長兼大神官 | (芳名) |
断言府長兼厚生大臣 | (芳名) |
監視部長兼産業大臣 | (芳名) |
全部署管理局長兼総務大臣 | (芳名) |
新設院長兼国政監査局長 | (芳名) |
金銭部長兼財務大臣 | (芳名) |
外交部長兼外務大臣 | (芳名) |
教育部長兼教育大臣 | (芳名) |
労働部長兼労働大臣 | (芳名) |
通信部長兼通信大臣 | (芳名) |
農業部長兼農林大臣 | (芳名) |
漁業部長兼水産大臣 | (芳名) |
罪人部長兼国民最高裁判所長官 | (芳名) |
処刑部長兼司法大臣 | (芳名) |
兵隊部長兼空軍大臣 | (芳名) |
宮管部長兼中王家庭裁判所長 | (芳名) |
建築部長兼建設大臣 | (芳名) |
輸送部長兼運輸大臣 | (芳名) |
領管部長兼下院議長 | (芳名) |
警察部長兼警察大臣 | (芳名) |
消防部長兼消防大臣 | (芳名) |
家来部長兼大来官 | (芳名) |
舞楽部長兼中王地方裁判所長 | (芳名) |
調理部長兼中王簡易裁判所判事 | (芳名) |
医療部長兼愚見高等裁判所長官 | (芳名) |
薬剤部長兼経済大臣 | (芳名) |
目次
表紙 | |||
上諭 | |||
目次 | |||
前文 | |||
憲法本文 | |||
第一章 | 国礎 | 第一条から第七条 | |
第二章 | 国王 | 第八条から第十九条 | |
第三章 | 国民の権利及び義務 | 第二十条から第七十五条 | |
第四章 | 政事議会 | 第七十六条から第百十条 | |
第五章 | 内閣 | 第百十一条から第百二十五条 | |
第六章 | 司法 | 第百二十六条から第百三十八条 | |
第七章 | 財政 | 第百三十九条から第百四十七条 | |
第八章 | 地方自治 | 第百四十八条から第百五十五条 | |
第九章 | 丞相匡府 | 第百五十六条から第百五十九条 | |
第十章 | 改正 | 第百六十条から第百六十三条 | |
第十一章 | 最高法規 | 第百六十四条から第百六十六条 | |
第十二章 | 補則 | 第百六十七条から第百七十条 |
前文
新儀元年四月十日、泰佑帝國は、その旗が大地に刺さる音と共に始まった。大国を打ち建てられた泰佑皇帝は、六要州に宮殿を建て、自ら筆を執り、国政に務められた。
新儀四年五月十七日、泰佑皇帝は永大断言命令を渙発された。新儀改革の始まり、理想的国家樹立の完遂のときが近づいていたのである。
本憲法では、我が国の国号を泰佑共和国と定めているが、我が国は共和制国家ではなく、国王を戴く立憲君主制国家である。ここで言う共和とは、政治体制の一つである共和制ではなく、同体という意味で用いられている。即ち、泰佑共和国は、「国民が一丸となって発展して行く国」という意味が込められているのである。
そうしたこの国で、今、新憲法たる泰佑共和国憲法が制定されたのである。
我等泰佑共和国民は、本憲法が諸国民の公明正大な努力によって得られたものであるということを忘れることなく、我等と我等の子孫に、永久に本憲法が海内無双のものであって、これに反してはならないということを伝え行く責務を保持する。
又、我等は世界が平和で、全人類が自由と平等の中に生存する権利を有することを再確認する。そもそも人類は、地球に生きる生命であり、我等人類以外の生命がそうであるように、恙無くその生涯を遂げることが出来なければならないのである。即ち、己の運命は、己のみが左右出来るのである。そして、己以外が定めた運命に従うも、従わぬも己の意思によって決定されるのである。我等はこの生命普遍の原理に反する憲法及び法令並びに詔勅を永久に排除する。
我等泰佑共和国民は、我が国の為に、世界の為に、本憲法が制定されたことを深く喜び、永久にこれを遵守して行くことを、高らかに宣言する。
泰永二年 十二月十日 木曜日
政治部長兼内閣総理大臣 (芳名)
憲法本文
第一章 国礎
第一条【国号】
国号は、「泰佑共和国」に定める。
第二条【儀礼的国王主権】
泰佑共和国の主権は、国王に存する。但し、この主権は、国民の為に、国民の総意に副って行使しなければならない。
第三条【国旗】
国旗は、「君教旗」に定める。
第四条【国歌】
国歌は、「祖国の弥栄を」に定める。
第五条【国章】
国章は、「君心拜命圖」に定める。
第六条【国語】
泰佑共和国の国語は、日本語に定める。
第七条【本章の詳細及び補則】
本章の詳細及びその他の国礎に関する事項は、法律で定める。
第二章 国王
第八条【国王の地位】
国王は、泰佑共和国の元首であり、泰佑共和国の象徴且つ泰佑共和国民統合の象徴であって、その地位は、王位の継承まで確実に保障される。
第九条【王位の継承】
王位は世襲であり、王室典範の定める所により、王室の男系男子が継承する。
第十条【三権分立】
第一項 国王は統治権を総攬し、これを次に掲げる各項の規定に基づき分権し、その奉還を受ける。第二項 国王は、統治権の内、立法権を政事議会に、司法権を国民最高裁判所及び下級裁判所に、行政権を内閣に分権する。
第三項 国王は、政事議会の下院が解散された時、下院から立法権の奉還を受ける。尚、この憲法及び法律に基づいた所定の手続きを経て下院が再び開会された時は、直ちにこれを分権しなければならない。但し、この場合、上院から立法権の奉還は、必要ない。
第四項 国王は、国民最高裁判所長官が任期満了又は国民審査、或いは身体の故障等で辞職することになった時、国民最高裁判所から司法権の奉還を受ける。尚、この憲法及び法律に基づいた所定の手続きを経て新たに国民最高裁判所長官が任命された時は、直ちにこれを分権しなければならない。但し、下級裁判所の長が辞職する場合、或いは着任する場合に於いては、この必要はない。
第五項 国王は、内閣が総辞職する時、内閣から行政権の奉還を受ける。尚、この憲法及び法律に基づいた所定の手続きを経て内閣が再び組織された時は、直ちにこれを分権しなければならない。
第六項 本章第九条に基づき王位の継承が為された時、新国王は、政事議会から立法権、国民最高裁判所及び下級裁判所から司法権、内閣から行政権の奉還を受け、その名によって、再びこれを各機関に分権する。
第七講 本条規以外に統治権の分権及び奉還を受ける規定は、この憲法及び法律のみで定めることが出来る。
第十一条【国王の任命行為】
国王は、次に掲げる任命に関する行為を行う。一、 政事議会の上奏に基づき、内閣総理大臣の任命をすること。
二、 内閣の上奏に基づき、国務大臣の任命をすること。
三、 内閣の奏上に基づき、府長の任命をすること。
四、 内閣の上奏に基づき、国民最高裁判所長官の任命をすること。
五、 政事議会の上奏に基づき、各院の議長の任命をすること。
六、 本条規以外に、この憲法及び法律の定める任命をすること。
第十二条【国王の国事行為】
国王は、内閣又は国民最高裁判所及び下級裁判所の上奏、或いは奏上に基づき、次に掲げる国事に関する行為を行う。一、 憲法改正、法律、政令の公布及び詔勅の渙発並びに条約を締結すること。
二、 政事議会を召集すること。
三、 下院を解散すること。
四、 政事議会議員の総選挙の施行を公示すること。
五、 府長及び国務大臣並びに法律の定めるその他の官吏の任免また、全権委任状及び大使並びに公使の信任状を裁可すること。
六、 法律の定める刑の執行を命令すること。
七、 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を裁可すること。
八、 栄典を授与すること。
九、 批准書及び法律の定めるその他の外交文書を裁可すること。
十、 外国の大使及び公使を接受すること。
十一、 陸海軍を統帥すること。
十二、 宣戦を布告すること。
十三、 戦争の講和条約を締結すること。
十四、 法律の定める儀式を行うこと。
十五、 本条規以外に、この憲法及び法律の定める国事に関する行為をすること。
第十三条【元号】
元号は、本章第九条に基づき王位の継承が為された時、新国王が内閣の上奏に基づき、改める。尚、国王は、この元号の選定に関与することが出来る。
第十四条【国王の特定行為に係る各機関の上奏又は奏上】
国王の任命及び国事に関する行為の全てには、この憲法の定める各機関の上奏又は奏上を必要とし、その責任は、上奏又は奏上をした各機関が負う。
第十五条【国王の権能及び枢密院】
第一項 国王は、普通、この憲法に定める特定の事項に関する行為のみを行うが、それに伴って生じる上奏又は奏上に対し、意見を述べることが出来る。第二項 国王は、国政上の発生する時事やその他の事項に関して疑問を持った時は、枢密院に諮詢をすることが出来る。又、この枢密院に関する詳細は、法律で定める。
第三項 何等かの事由によって内閣が行政権を行使出来なくなったり、政事議会が立法権を行使出来なくなったり、国民最高裁判所及び下級裁判所が司法権を行使出来なくなったりした時は、国王は、国政を親らの意思によって動かすことが出来る。これは第九章に定める親政総府とは相容れるものであり、又これ等の時、それぞれの機関は統治権を国王に奉還する必要は無い。
第十六条【王室の財産授受】
王室に財産を譲り渡し又は王室が財産を譲り受け、若しくは賜与することは、政事議会の議決に基づかなければならない。
第十七条【国王の特定行為の委任】
国王は、法律の定める所により、この憲法の定める特定の事項に関する行為を摂政に委任することが出来る。
第十八条【摂政の任命】
摂政は王室典範に基づき、国王が王室の男系男子から一名を任命する。但し、国王が身体の故障等で任命することが出来ない場合は、内閣総理大臣が代わって王室典範に基づき、王室の男系男子から一名、これを任命する。なお、摂政を任命する時に王室に男系男子の無い時は、臨時として、官吏から任命する。
第十九条【摂政の特定行為】
摂政は、国王の名でこの憲法に定める特定の事項に関する行為を行う。但し、この特定の事項に関する行為は、全てこの憲法及び法律に基づいたものでなければならない。
第三章 国民の権利及び義務
第二十条【国民の要件】
泰佑共和国民たる要件は、法律で定める。
第二十一条【基本的人権の享有】
全て国民は、全ての基本的人権を享有する。又、この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことの出来ない永久の権利である。
第二十二条【国民の責務】
この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力により、保持されなければならない。又、国民は、これを濫用してはならず、自由及び権利には責任並びに義務が伴うことを自覚し、常に公共の福祉に反してはならない。
第二十三条【個人の尊重及び公共の福祉】
全て国民は、人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政上で、最大限に尊重されなければならない。
第二十四条【法の下の平等】
全て国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、障害の有無、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係に於いて、差別されない。
第二十五条【栄典】
本章第二十四条に基づき、栄誉及び勲章その他の栄典の授与は、現にこれを有し又は将来これを享ける者の一代に限り、その効力を有する。
第二十六条【貴族】
爵位を享けた者は、法律の定める所により、貴族となる。
第二十七条【公務員の選定及び罷免の権利】
公務員を選定し罷免することは、国民の権利である。これは、永久に覆すことの出来ない、固有の権利である。
第二十八条【公務員の本質】
全て公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない。
第二十九条【普通選挙の保障】
公務員の選定を選挙により行う場合は、泰佑共和国籍を有する成年者の普通選挙によって行われる。又、普通選挙は保障される。
第三十条【秘密投票の保障】
全て選挙に於ける投票の秘密は、侵されない。又、選挙人はその選択に関し、公的にも私的にも責任を問われない。
第三十一条【請願権】
何人も、損害の救済、公務員の罷免、法律及び命令又は規則の制定、廃止、或いはその改正、その他事項に関し、平穏に請願する権利を有する。
第三十二条【請願の保障】
請願をした者は、その為に如何なる差別的待遇も受けない。
第三十三条【国及び公共団体の賠償責任】
何人も、公務員の不法行為により損害を受けた時は、法律の定める所により、国又は公共団体に、その賠償を求めることが出来る。
第三十四条【身体の拘束からの自由】
何人も、その意に反すると否とにかかわらず、社会的又は経済的関係に於いて、身体を拘束されない。
第三十五条【苦役からの自由】
何人も、犯罪による処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。
第三十六条【思想及び良心の自由】
思想及び良心の自由は、保障する。
第三十七条【個人情報の保護】
何人も、個人に関する情報を不当に取得し、不当に保有し、不当に利用してはならない。
第三十八条【信教の自由】
第一項 信教の自由は、保障する。国は、如何なる宗教団体に対しても、特権を与えてはならない。第二項 何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。
第三項 国及び地方自治体その他の公共団体は、特定の宗教の為の教育その他の宗教的活動をしてはならない。但し、社会的儀礼又は習俗的行為の範囲を超えないものについては、この限りでない。
第四項 法律の定める所により行われる王室に関する宗教的な行事には、本条規の第二項以外の条項は適用されない。
第三十九条【信教の自由の制限】
本章第三十八条に基づき、信教の自由は保障されるが、公共の福祉を著しく害することを目的とした活動を行い並びにそれを目的として信教することは、認められない。
第四十条【集会及び結社並びに表現の自由】
集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、保障する。
第四十一条【集会及び結社の制限】
本章第四十条に基づき、集会及び結社の自由は保障されるが、公共の福祉を著しく害することを目的とした活動を行い並びにそれを目的として集会、結社をすることは、認められない。
第四十二条【通信の秘密】
検閲は、してはならない。又、通信の秘密は、侵してはならない。
第四十三条【国政上の行為に関する説明の責務】
国は、国政上の行為について、国民に説明する責務を負う。
第四十四条【居住及び移転並びに職業選択の自由】
何人も、居住及び移転並びに職業選択の自由を有する。
第四十五条【外国移住及び国籍離脱の自由】
全て国民は、外国に移住し又は国籍を離脱する自由を有する。
第四十六条【学問の自由】
学問の自由は、保障する。
第四十七条【家族生活に於ける個人の尊厳と両性の平等】
第一項 婚姻は、両性の合意に基づいて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。第二項 同性同士の婚姻は、互いの合意に基づいて成立し、互いが同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。
第三項 家族、扶養、後見、婚姻及び離婚、財産権、相続並びに親族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。
第四十八条【生存権】
全て国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
第四十九条【国の社会的使命】
国は、国民生活のあらゆる側面に於いて、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。
第五十条【環境保全の責務】
国は、国民と協力して、国民が良好な環境を享受することが出来るように、その保全に努めなければならない。
第五十一条【在外国民の保護】
国は、国外に於いて緊急事態が生じた時は、在外国民の保護に努めなければならない。
第五十二条【犯罪被害者等への配慮】
国は、犯罪被害者及びその家族の人権及び処遇に配慮し、その改善に努めなければならない。
第五十三条【教育を受ける権利】
全て国民は、法律の定める所により、その能力に応じて、等しく教育を受ける権利を有する。
第五十四条【教育の義務】
全て国民は、法律の定める所により、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負う。又、義務教育は、無償とする。
第五十五条【教育に於ける国の義務】
国は、教育が国の未来を切り拓く上で欠くことの出来ないものであることに鑑み、教育環境の整備に努めなければならない。
第五十六条【勤労の権利及び義務】
全て国民は、勤労の権利を有し、義務を負う。
第五十七条【勤労条件の自由】
賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律で定める。
第五十八条【児童酷使の禁止】
何人も、児童を酷使してはならない。
第五十九条【勤労者の団結権】
勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、保障する。
第六十条【公務員の労働基本権の制限】
公務員については、全体の奉仕者であることに鑑み、法律の定める所により、前条規に規定する権利の全部又は一部を制限することが出来る。この場合に於いては、公務員の勤労条件を改善する為、必要な措置が講じられなければならない。
第六十一条【財産権】
第一項 財産権は、保障する。第二項 財産権の内容は、公共の福祉に適合するように、法律で定める。この場合に於いて、知的財産権については、国民の知的創造力の向上に資するように配慮しなければならない。
第三項 私有財産は、正当な補償の下に、公共の為に用いることが出来る。
第六十二条【納税の義務】
国民は、法律の定める所により、納税の義務を負う。
第六十三条【法定の手続きの保障】
何人も、法律の定める適正な手段によらなければ、その生命若しくは自由を奪われ、その他の刑罰を科せられない。
第六十四条【裁判を受ける権利】
何人も、裁判所に於いて裁判を受ける権利を有する。
第六十五条【逮捕の要件】
何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、裁判官が発し、且つ理由となっている犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。
第六十六条【抑留及び拘禁の要件】
何人も、正当な理由を直ちに告げられ、且つ直ちに弁護人に依頼する権利を与えられなければ、抑留、或いは拘禁されない。
第六十七条 不法拘禁に対する保障
拘禁された者は、拘禁の理由を直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示すことを求める権利を有する。
第六十八条【住居の不可侵】
第一項 何人も、正当な理由に基づいて発せられ、且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状によらなければ、住居その他の場所、書類及び所持品について、侵入、捜索又は押収を受けない。但し、本章第六十五条の規定により逮捕される場合は、この限りでない。第二項 本条規の前項に定める規定による捜索又は押収は、裁判官が発する各別の令状によって行う。
第六十九条【拷問及び残虐刑の禁止】
公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対に禁止する。
第七十条【刑事被告人の権利】
第一項 全て刑事事件に於いては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。第二項 被告人は、全ての証人に対して審問する機会を十分に与えられる権利及び公費で自己の為に強制的手続きにより証人を求める権利を有する。
第三項 被告人は、如何なる場合にも資格を有する弁護人を依頼することが出来る。被告人が自らこれを依頼することが出来ない時は、国でこれ付す。
第七十一条【自己に不利益な供述】
何人も、自己に不利益な供述を強要されない。
第七十二条【自白の証拠能力】
拷問、脅迫その他の強制による自白又は不当に長く抑留され、若しくは拘禁された後の自白は、証拠とすることが出来ない。又、何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされない。
第七十三条【遡及処罰の禁止】
何人も、実行の時に違法ではなかった行為又は既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問われない。
第七十四条【一事負不再理】
何人も、同一の犯罪については、重ねて刑事上の責任を問われない。
第七十五条【刑事補償を求める権利】
何人も、抑留され又は拘禁された後、裁判の結果無罪となった時は、法律の定める所により、国にその補償を求めることが出来る。
第四章 政事議会
第七十六条【政事議会の地位及び立法権】
政事議会は、国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である。
第七十七条【両院制】
政事議会は、上院及び下院の両議院で構成する。
第七十八条【政安院】
第一項 政事議会は、両議院の他に政安院を有する。これは、政事議会の運営を滞りなく進行させる為に設けるものである。第二項 政安院に関するその他の事項は、法律で定める。
第七十九条【両議院の組織】
第一項 上院は、貴族の議員で組織する。第二項 下院は、全国民を代表する選挙された議員で組織する。
第三項 両議院の議員の定数は、法律で定める。
第四項 両議院は、儀礼的に国王を議員に準ずる扱いとする。但し、国王の投票権は、認めない。
第八十条【議員及び選挙人の資格】
両議院の議員及びその選挙人の資格は、法律で定める。但し、人種、信条、性別、障害の有無、社会的身分、門地、教育、財産又は収入によって差別してはならない。
第八十一条【上院議員の任期】
上院議員の任期は、爵位の剝脱、或いは議員の辞職までとする。
第八十二条【下院議員の任期】
下院議員の任期は、四年とする。但し、下院が解散された場合には、その期間満了前に終了する。
第八十三条【選挙に関する事項】
選挙区、投票の方法、その他両議院の議員の選挙に関する事項は、法律で定める。この場合に於いては、各選挙区は、人口を基本とし、行政区画、地勢等を総合的に勘案して定めなければならない。
第八十四条【両議院議員兼職の禁止】
何人も、同時に両議院の議員となることは出来ない。
第八十五条【議員の歳費】
両議院の議員は、法律の定める所により、国庫から相当額の歳費を受ける。
第八十六条【議員の不逮捕特権】
両議院の議員は、法律の定める場合を除いては、政事議会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、その議院の要求がある時は、会期中、釈放しなければならない。
第八十七条【議員の免責特権】
両議院の議員は、議院で行った演説、討論又は表決について、院外で責任を問われない。
第八十八条【常会】
第一項 政事議会の常会は、毎年一回召集される。第二項 常会の会期は、法律で定める。
第八十九条【臨時会】
内閣は、政事議会の臨時会の召集を決定することが出来る。いずれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があった時は、要求があった日から二十日以内に臨時会が召集されなければならない。
第九十条【下院の解散】
下院の解散は、内閣総理大臣が決定する。この場合、下院は統治権の内、立法権を国王に奉還する。
第九十一条【下院議員の総選挙及び特別会】
下院が解散された時は、解散の日から四十日以内に下院議員の総選挙を行い、その選挙の日から三十日以内に、特別会が召集されなければならない。又、この特別会に於いて、下院は、国王から立法権の分権を受ける。
第九十二条【上院の緊急集会】
下院が解散された時、上院は同時に閉会となる。但し、内閣は、国に緊急の必要がある時は、上院の緊急集会を求めることが出来る。
第九十三条【緊急集会の措置の効力】
本章第九十二条に基づく緊急集会に於いて採られた措置は臨時のものであって、次の政事議会開会の後十日以内に、下院の同意がない場合には、その効力を失う。
第九十四条【資格争訟の議決】
両議院は、各その議員の資格に関して争いがある時は、これについて審査し、議決する。但し、議員の議席を失わせるには、出席議員の三分の二以上の多数による議決を必要とする。
第九十五条【表決】
両議院の議事は、この憲法に特別の定めのある場合を除いては、出席議員の過半数で決し、可否同数の時は、議長の決する所による。
第九十六条【定足数】
両議院の議決は、各その総議員の三分の一以上の出席がなければすることが出来ない。
第九十七条【会議の公開】
両議院の会議は、公開しなければならない。但し、出席議員の三分の二以上の多数で議決した時は、秘密会を開くことが出来る。
第九十八条【会議録】
両議院は、各その会議の記録を保存し、秘密会の記録の中で特に秘密を要すると認められるものを除き、これを公表し、且つ一般に頒布しなければならない。
第九十九条【表決の記載】
出席議員の五分の一以上の要求がある時は、各議員の表決を会議録に記載しなければならない。
第百条【役員の選任】
両議院は、各その議長、その他の役員を選任する。
第百一条【議院規則】
両議院は、各その会議その他の手続き及び内部の規律に関する規則を定め並びに院内の秩序を乱した議員を懲罰することが出来る。但し、議員を除名するには、出席議員の三分の二以上の多数による議決を必要とする。
第百二条【法律案の議決】
法律案は、この憲法に特別の定めのある場合を除いては、両議院で可決した時、法律となる。
第百三条【下院の優越】
第一項 下院で可決し、上院でこれと異なった議決をした法律案は、下院で出席議員の三分の二以上の多数で再び可決した時は、法律となる。第二項 前項に定める規定は、法律の定める所により、下院が両議院の協議会を開くことを、政安院に求めることを妨げない。
第三項 下院が、上院の可決した法律案を受け取った後、政事議会休会中の期間を除いて六十日以内に、議決しない時は、上院は、下院がその法律案を否決したものと見做すことが出来る。
第百四条【下院の予算先議】
予算案は、先に下院で審議されなければならない。
第百五条【予算議決に関する下院の優越】
予算案について、上院で下院と異なった議決をした場合に於いて、法律の定める所により、両議院の協議会を開いても意見が一致しない時又は上院が下院の可決した予算案を受け取った後、政事議会休会中の期間を除いて三十日以内に議決しない時は、下院の議決を政事議会の議決とする。
第百六条【条約の承認に関する下院の優越】
条約の締結に必要な政事議会の承認については、本章第百五条の規定を準用する。
第百七条【両議院の国政調査】
両議院は、各国政に関する調査を行い、これに関して、証人の出頭及び証言並びに記録の提出を要求することが出来る。
第百八条【閣僚の議院出席の権利と義務】
内閣総理大臣及びその他の国務大臣は、両議院に議席を有するか有しないかにかかわらず、いつでも議案について発言する為、議院に出席することが出来る。又、答弁又は説明の為出席を求められた時は、出席しなければならない。但し、職務の遂行上特に必要がある場合は、この限りでない。
第百九条【弾劾裁判所】
第一項 政事議会は、罷免の訴追を受けた裁判官を裁判する為、両議院の議員で組織する弾劾裁判所を設ける。第二項 弾劾に関する事項は、法律で定める。
第百十条【政党】
第一項 国は、政党が議会制民主主義に不可欠の存在であることに鑑み、その活動の公正の確保及びその健全な発展に努めなければならない。第二項 政党の政治活動の自由は、保障する。
第三項 前二項に定めるものの他、政党に関する事項は、法律で定める。
第五章 内閣
第百十一条【行政権】
行政権は、この憲法の特別の定めのある場合を除き、内閣に属する。
第百十二条【内閣の組織】
第一項 内閣は、法律の定める所により、その首長である内閣総理大臣及びその他の府長及び国務大臣で構成する。第二項 内閣総理大臣及び全ての府長及び国務大臣は、現役の軍人であってはならない。
第百十三条【政事議会に対する連帯責任】
内閣は、行政権の行使について、政事議会に対し、連帯して責任を負う。
第百十四条【内閣総理大臣の指名】
第一項 内閣総理大臣は、政事議会議員の中から政事議会が指名する。第二項 政事議会は、他の全ての案件に先立って、内閣総理大臣の指名を行わなければならない。
第三項 上院と下院とが異なった指名をした場合に於いて、法律の定める所により、両議院の協議会を開いても意見が一致しない時又は下院が指名をした後、政事議会休会中の期間を除いて十日以内に上院が指名をしない時は、下院の指名を政事議会の指名とする。
第百十五条【府長の任命及び罷免の奏上】
第一項 内閣総理大臣は、府長の任命を奏上する。第二項 内閣総理大臣は、任意に府長の罷免を奏上することが出来る。
第百十六条【国務大臣の任命及び罷免の上奏】
第一項 内閣総理大臣は、国務大臣の任命を上奏する。この場合に於いては、その過半数は、政事議会議員の中から任命しなければならない。但し、泰永五十三年三月九日まではこの規定を無視することが出来る。又、若しこの期日までに第二章第十三条に基づき改元が行われた時は、泰永の元号は継続しているものとして見做すことが出来る。第二項 内閣総理大臣は、任意に国務大臣の罷免を上奏することが出来る。
第百十七条【内閣の不信任と総辞職】
内閣は、下院が不信任の決議案を可決し又は信任の決議案を否決した時は、十日以内に下院が解散されない限り、総辞職をしなければならない。この場合、内閣は統治権の内、行政権を国王に奉還する。
第百十八条【府長の事務不干渉】
内閣の総辞職によって府長が職を失うことはない。又、内閣によって国政の方針が変更された時も、府は、その影響によって、その事務を妨げられない。
第百十九条【内閣総理大臣の欠缺及び新政事議会の召集と内閣の総辞職】
内閣総理大臣が欠けた時又は下院議員の総選挙の後に初めて政事議会の召集があった時は、内閣は、総辞職をしなければならない。
第百二十条【内閣総理大臣の欠缺時等の国務大臣の職務】
内閣総理大臣が欠けた時、その他これに準ずる場合として法律で定める時は、内閣総理大臣があらかじめ指定した国務大臣が、臨時に、その職務を行う。
第百二十一条【総辞職後の内閣】
本章第百十七条及び百十九条並びに百二十条の場合には、内閣は、新たに内閣総理大臣が任命されるまでの間は、引き続き、その職務を行う。この場合、既に行政権は、国王に奉還していなければならない。
第百二十二条【内閣総理大臣の職務】
第一項 内閣総理大臣は、行政各部を指揮監督し、その総合調整を行う。第二項 内閣総理大臣は、内閣を代表して議案を政事議会に提出し並びに一般国務及び外交関係について政事議会に報告する。
第三項 内閣総理大臣は、陸海空軍の統帥を大元帥たる国王に上奏する。
第百二十三条【内閣の職務】
内閣は、他の一般行政事務のほか、次に掲げる事務を行う。一、 法律を誠実に執行し、国務を総理すること。
二、 外交関係を処理すること。
三、 条約の締結を上奏すること。但し、事前に又はやむを得ない場合は事後に、政事議会の承認を得ることを必要とする。
四、 法律の定める基準に従い、官吏に関する事務をつかさどること。
五、 予算案及び法律案を作成して政事議会に提出すること。
六、 この憲法及び法律の規定に基づき、政令を制定し、その公布を上奏すること。但し、政令には、特にその法律の委任がある場合を除いては、義務を課し又は権利を制限する規定を設けることが出来ない。
七、 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を決定し、上奏すること。
八、 宣戦の布告及び講和条約の締結を上奏すること。
九、 本条規以外に、この憲法及び法律の定める事務を行うこと。
第百二十四条【法律及び政令の親署及び副署】
法律及び政令には、親署及び内閣総理大臣の副署が無ければならない。但し、国王が署名をした時点でその法律及び政令は有効となる。尚、必要に応じ内閣総理大臣は、国務大臣及び府長に副署の追加を申し入れることが出来る。
第百二十五条【国務大臣の特典】
国務大臣は、その在任中、内閣総理大臣の同意がなければ、公訴を提起されない。但し、国務大臣でなくなった後に、公訴を提起することを妨げない。
第六章 司法
第百二十六条【司法権及び裁判所】
全て司法権は、国民最高裁判所及び法律の定める所により設置する下級裁判所に属する。
第百二十七条【特別裁判所の禁止】
特別裁判所は、設置することが出来ない。行政機関は、終審として裁判を行うことが出来ない。
第百二十八条【裁判官の独立】
全て裁判官は、その良心に従いつつ独立してその職権を行い、この憲法及び法律にのみ拘束される。
第百二十九条 国民最高裁判所の規則制定権
第一項 国民最高裁判所は、裁判に関する手続き、弁護士、裁判所の内部規律及び司法事務処理に関する事項について、規則を定める権限を有する。第二項 検察官、弁護士その他の裁判に関わる者は、最高裁判所の定める規則に従わなければならない。
第三項 国民最高裁判所は、下級裁判所に関する規則を定める権限を、下級裁判所に委任することが出来る。
第百三十条【裁判官の身分の保障】
裁判官は、裁判により、心身の故障の為に職務を執ることが出来ないと決定された場合を除いては、公の弾劾によらなければ罷免されない。裁判官の懲戒処分は、行政機関が行うことは出来ない。
第百三十一条【国民最高裁判所の裁判官】
国民最高裁判所は、その長である裁判官及び法律の定める員数のその他の裁判官で構成し、最高裁判所の長である裁判官以外の裁判官は、内閣が上奏し、国王が任命する。
第百三十二条【国民最高裁判所の裁判官の国民審査】
国民最高裁判所の裁判官は、その任命後、法律の定める所により、国民の審査を受けなければならない。
第百三十三条【国民最高裁判所の裁判官の定年】
国民最高裁判所の裁判官は、法律の定める年齢に達した時に退官する。
第百三十四条【国民最高裁判所の裁判官の報酬】
最高裁判所の裁判官は、全て定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中分限又は懲戒による時及び一般の公務員の例による時を除き、減額出来ない。
第百三十五条【下級裁判所の裁判官及びその任期並びに報酬】
下級裁判所の裁判官は、国民最高裁判所の指名した者の名簿によって、内閣が任命する。その裁判官は、法律の定める任期を限って任命され、再任されることが出来る。但し、法律の定める年齢に達した時には、退官する。
第百三十六条【下級裁判所の裁判官の報酬】
下級裁判所の裁判官は、全て定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、分限又は懲戒による場合及び一般の公務員の例による場合を除き、減額出来ない。
第百三十七条【違憲審査権又は違憲立法審査権及び国民最高裁判所】
最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。
第百三十八条【裁判の公開】
第一項 裁判の口頭弁論及び公判手続き並びに判決は、公開の法廷で行う。第二項 裁判所が、裁判官の全員一致で、公の秩序、又は善良の風俗を害するおそれがあると決した場合には、口頭弁論及び公判手続きは、公開しないで行うことが出来る。但し、政治犯罪、出版に関する犯罪又は第三章で保障する国民の権利が問題となっている事件の口頭弁論及び公判手続きは、常に公開しなければならない。
第七章 財政
第百三十九条【財政の基本原則】
第一項 国の財政を処理する権限は、政事議会の議決に基づいて行使しなければならない。第二項 財政の健全性は、法律の定める所により、確保されなければならない。
第百四十条【課税】
新たに租税を課し又は現行の租税を変更するには、法律の定める所によることを必要とする。
第百四十一条【国費の支出及び国の債務負担】
国費を支出し又は国が債務を負担するには、政事議会の議決に基づくことを必要とする。
第百四十二条【予算】
第一項 内閣は、毎会計年度の予算案を作成し、政事議会に提出して、その審議を受け議決を経なければならない。第二項 内閣は、毎会計年度中に於いて、予算を補正する為の予算案を提出することが出来る。
第三項 内閣は、当該会計年度開始前に本条規第一項の議決を得られる見込みがないと認める時は、暫定期間に係る予算案を提出しなければならない。
第四項 毎会計年度の予算は、法律の定める所により、政事議会の議決を経て、翌年度以降の年度に於いても支出することが出来る。
第百四十三条 【予備費】
第一項 予見し難い予算の不足に充てる為、政事議会の議決に基づいて予備費を設け、内閣の責任でこれを支出することが出来る。第二項 全て予備費の支出については、内閣は、事後に政事議会の承諾を得なければならない。
第百四十四条【王室財産及び王室の費用】
全て王室財産は、国に属する。全て王室の費用は、予算案に計上し、政事議会の議決を経なければならない。
第百四十五条【公の財産の支出又は利用の制限】
第一項 公金その他の公の財産は、第三章第三十八条第三項に規定する場合を除き、宗教的活動を行う組織若しくは団体の使用、便益、或いは維持の為支出し又はその利用に供してはならない。第二項 公金その他の公の財産は、国若しくは地方自治体その他の公共団体の監督が及ばない慈善、教育若しくは博愛の事業に対して支出し又はその利用に供してはならない。
第百四十六条【決算検査及び国政監査局】
第一項 内閣は、国の収入支出の決算について、全て毎年、国政監査局の検査を受け、法律の定める所により、次の年度にその検査報告とともに政安院に提出し、両議院に於いて、その承認を受けなければならない。第二項 国政監査局の組織及び権能は、法律で定める。
第三項 内閣は、本条規第一項の検査報告の内容を予算案に反映させ、政事議会に対し、その結果について報告しなければならない。
第百四十七条【財政状況の報告】
内閣は、政事議会に対し、定期に、少なくとも毎年一回、国の財政状況について報告しなければならない。
第八章 地方自治
第百四十八条【地方自治の本旨】
第一項 地方自治は、住民の参画を基本とし、住民に身近な行政を自主的、自立的且つ総合的に実施することを旨として行う。第二項 住民は、その属する地方自治体の役務の提供を等しく受ける権利を有し、その負担を公平に分担する義務を負う。
第百四十九条【地方自治体の種類】
地方自治体は、基礎地方自治体及びこれを包括する広域地方自治体とすることを基本とし、その種類は、法律で定める。
第百五十条【地方自治の基本原則】
地方自治体の組織及び運営に関する基本的事項は、地方自治の本旨に基づいて、法律で定める。
第百五十一条【国及び地方自治体の協力】
国及び地方自治体は、法律の定める役割分担を踏まえ、協力しなければならない。地方自治体は、相互に協力しなければならない。
第百五十二条【地方自治体の議会及び公務員の直接選挙】
第一項 地方自治体には、法律の定める所により、条例その他重要事項を議決する機関として、議会を設置する。第二項 地方自治体の長、議会の議員及び法律の定めるその他の公務員は、当該地方自治体の住民であって泰佑共和国籍を有する者が直接選挙する。
第百五十三条【地方自治体の権能】
地方自治体は、その財産を管理し、事務を処理し及び行政を執行する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することが出来る。
第百五十四条【地方自治体の財政及び国の財政措置】
第一項 地方自治体の経費は、条例の定める所により、課する地方税その他の自主的な財源をもって充てることを基本とする。第二項 国は、地方自治体に於いて、本条規の前項に定める自主的な財源だけでは地方自治体の行うべき役務の提供が出来ない時は、法律の定める所により、必要な財政上の措置を講じなければならない。
第三項 第七章第百三十九条第二項の規定は、地方自治について準用する。
第百五十五条【地方自治特別法】
特定の地方自治体の組織、運営若しくは権能について他の地方自治体と異なる定めをし又は特定の地方自治体の住民にのみ義務を課し、権利を制限する特別法は、法律の定める所により、その地方自治体の住民の投票に於いて、有効投票の過半数の同意を得なければ、制定することが出来ない。
第九章 丞相匡府
第百五十六条【国家緊急事態の宣言】
第一項 内閣総理大臣は、我が国に対する外部からの武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱、地震等による大規模な自然災害、その他の法律で定める緊急事態に於いて、特に必要があると認める時は、法律の定める所により、閣議にかけて、国家緊急事態の宣言を発することが出来る。第二項 国家緊急事態の宣言は、法律の定める所により、事前又は事後に政事議会の承認を得なければならない。
第三項 内閣総理大臣は、本条規第二項の場合に於いて不承認の議決があった時、政事議会が国家緊急事態の宣言を解除すべき旨を議決した時又は事態の推移により当該宣言を継続する必要がないと認める時は、法律の定める所により、閣議にかけて、当該宣言を速やかに解除しなければならない。又、百日を超えて国家緊急事態の宣言を継続しようとする時は、五十日を超えるごとに、事前に政事議会の承認を得なければならない。
第四項 本条規第二項及び第三項の政事議会の承認については、第四章第百五条の規定を準用する。この場合に於いて、同条規中「三十日以内」とあるものは、「三日以内」と読み替えるものとする。
第五項 政事議会の承認を得る時、上院又は下院が、選挙、或いは解散の時は、いずれかの議院の承認を得た上でもう一方の議院が再び組織された時は、同様にその承認を得ることを必要とする。
第六項 本条規第五項に基づき、下院が解散されている時の政事議会の承認は、上院の緊急集会をもって、政事議会の承認とする。
第七項 両議院に於いて、国家緊急事態の宣言について、どちらか一方の議院のみが承認をした時は、その議院の承認を政事議会の承認とする。但し、両議院共に不承認の議決をした時は、政事議会の不承認と扱う。
第百五十七条【親政総府の設置】
第一項 本章第百五十六条第一項に基づき、国家緊急事態の宣言が発せられた場合、内閣は行政権を、国王に直ちに奉還する。第二項 本章第百五十六条第三項に基づき、国家緊急事態の宣言が解除された場合、国王は、直ちに内閣に行政権を分権する。
第百五十八条【親政総府の役職】
第一項 親政総府の長は、内閣総理大臣とする。第二項 内閣総理大臣は、国王の親政をその他の官吏と共に輔佐する。
第三項 親政総府に於ける最高役員は四名とする。この役員の長は内閣総理大臣とする。
第四項 最高役員に関する詳細は、法律で定める。
第五項 その他の役職及び親政総府に関する事項は、法律で定める。
第百五十九条【国家緊急事態の宣言の効果】
第一項 国家緊急事態の宣言が発せられた時は、法律の定める所により、国王は、法律と同一の効力を有する勅令を渙発することが出来る。又、丞相は財政上必要な支出その他の処分を行い、地方自治体の長に対して必要な指示をすることが出来る。第二項 勅令の渙発及びその廃止については、法律の定める所により、事後に政事議会の承認を得なければならない。この承認に関する規定は、本章第百五十六条に定める規定を準用する。
第三項 国家緊急事態の宣言が発せられた場合には、何人も、法律の定める所により、当該宣言に係る事態に於いて国民の生命、身体及び財産を守る為に行われる措置に関して発せられる国その他公の機関の指示に従わなければならない。この場合に於いても、第三章第二十四条及びその他の基本的人権に関する条規は、最大限に尊重されなければならない。
第四項 国家緊急事態の宣言が発せられた場合に於いては、法律の定める所により、その宣言が効力を有する期間、下院は解散されないものとし、両議院の議員の任期及びその選挙期日の特例を設けることが出来る。この特例を定める場合、政事議会の承認は必要ない。
第十章 改正
第百六十条【一般条規の改正】
第一項 この憲法の一般条規の改正は、上院又は下院の議員の発議により、両議院のそれぞれの総議員の三分の二以上の賛成を必要とする。尚、この場合に於いて、国民に提案し、その承認を得る必要ない。第二項 一般条規は、第四章、第五章、第六章、第七章及び第八章の全条規とする。
第百六十一条【確定条規の改正】
第一項 この憲法の確定条規の改正は、上院又は下院の議員の発議により、両議院のそれぞれの総議員の三分の二以上の賛成で政事議会が議決し、国民に提案してその承認を得なければならない。この承認には、法律の定める所により行われる国民の投票に於いて有効投票の過半数の賛成を必要とする。第二項 確定条規は、第一章、第二章、第三章、第九章、第十章及び第十一章の全条規とする。
第百六十二条【憲法改正の公布】
憲法改正について本章第百六十条及び第百六十一条の承認を経た時は、国王は、直ちに憲法改正を公布する。
第百六十三条【改正の不可】
第十二章は、改正を行うことが出来ない。
第十一章 最高法規
第百六十四条【最高法規】
この憲法は、国の最高法規であって、その条規に反する法律、典範、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。
第百六十五条【条約及び国際法規の遵守】
泰佑共和国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。
第百六十六条【憲法尊重擁護の義務】
第一項 全て国民は、この憲法を尊重しなければならない。第二項 国王及び摂政並びに政事議会議員、府長、国務大臣、裁判官その他の公務員は、この憲法を擁護する義務を負う。
第十二章 補則
第百六十七条【憲法施行期日】
この憲法は、泰永三年三月十日木曜日から施行する。若し、この憲法の施行期日までに改元が行われた時は、泰永の元号は継続しているものとして見做すことが出来る。
第百六十八条【準備手続き】
この憲法を施行する為に必要な法律の制定、両議院議員の選挙及び政事議会召集の手続き並びにこの憲法を施行する為に必要な準備手続きは、本章第百六十七条に定める期日よりも前に行うことが出来る。
第百六十九条【経過規定の内、初代三権の長及び国務大臣並びにその他の官吏について】
この憲法による初代上院議長、初代下院議長、初代国民最高裁判所長官及び初代内閣総理大臣は、政事議会、国民最高裁判所及び内閣からの上奏を必要とせず、勅任とする。又、その他の官吏も必要に応じ勅任とし、上奏並びに奏上を必要としない。
第百七十条【経過規定の内、公務員の地位について】
この憲法施行の際、現に在職する国務大臣及び裁判官並びにその他の公務員で、その地位に相応する地位がこの憲法で認められている者は、法律で特別の定めをした場合を除いては、この憲法施行の為、その地位を失うことはない。但し、この憲法によって、後任者が選挙又は任命された時は、当然その地位を失う。